SVBONY SA206 暗視双眼鏡  です。
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見た目は完全に双眼鏡なのですけど2つあるレンズのうち結像させる光学系は手前の「FAR↔NEAR」という刻印がある方だけ、奥のレンズは赤外線照射用のレンズなのでこれを「双眼鏡」と言うかどうかは意見が分かれるところでしょうが、当ブログでは製造元の見解を尊重し「暗視双眼鏡」と呼称することに致します。

刻印のある方のレンズのセンサー上の結像が後ろにある長方形のディスプレイに出て来ることになります。
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こちらは通常モード。カラーになりますね。だいたいディスプレイから30㎝目を離した状態で1×ぐらいの倍率になり、公称のFOVは10°ですが実際には、長辺×短辺=10°×5°くらいになります。

IRモードに切り替えると、中でコトッという音がし(UV/IRカットフィルターと赤外フィルターを切り替えている?)モノクロになります。
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IRモードはIR1~IR7の7段階になっていて数値が大きくなるほど赤外線ライトが強くなるようです。
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左がIR1、右がIR7の状態ですね。

カラーの通常モードは昼間は良く見えるのですが、夜間になるとほとんど見えないのでIRモードに切り替えることになります。そうすると暗闇の中のオブジェクトが驚くほど浮かび上がってきます(夜間に庭のツワブキを見てみました)。
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ただこれはSA206が赤外線照射をしているからであって、照射用のレンズを手で覆って赤外線を遮ると
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かなり見えなくなります。こう見るとナチュラルにある赤外線のみだと暗視は厳しくて、やはり赤外線照射が必須なことも分かりますね。

ちなみにSA206は本体のみで画像や動画を撮ってMicroSDカードに記録できるようになっているので、このような画像を撮る時はとても便利です。
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(左側は内蔵リチウムバッテリーに充電するケーブル)

さて、ピントは手動になっていて光学系側のレンズを回して合わせるようになっているのですが、
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結構たくさん回さないとピントが動かないので、ディスプレイではなかなかうまく合わせられないですね。そのため上のツワブキは少しピントが甘いのですが、バッチリ合うとこんな感じです。
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周辺はかなり崩れて来ますが中心はそこそこシャープですね。

IR1でも近くの対称なら充分な赤外線照射が得られるのですが、15mくらい離れるとIR7まで赤外線を強くして何とか照射が届く感じでしょうか。20mくらい離れるともう限界で視野真ん中あたりの明るい物だけぼやーっと照らされてるかな? という感じになります。対象から15mくらいが赤外線照射の実用域くらいでしょうか。ナイトビジョン(イメージインテンシファイア)と違って赤外線照射のないナチュラル状態では実質暗視はできないですね(ただし実験時は新月期で月光なし。月夜の晩だと見える可能性もあります→7/22追記:満月の条件下でも赤外線照射なしでは夜景は全く見えませんでした)。


さて、天文関係者としてはやはり星を見た場合にどうなるかが気になるところです。とりあえずISOを最高値の1600に設定。
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これをこと座に向けてみますと
こと座
こんな感じでした。シャッター速度が遅くなっているためか、どうやっても手ぶれ起こす上に、限界等級は3等程度? やはり視野が狭すぎてものすごい使いにくいです(笑)

30㎝F5ドブソニアン23倍(瞳径13㎜)でコリメートしてみたら・・・
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(地上風景)

これたぶんM57付近
m57付近
全然ダメですね。あ、輝線のM57が赤外で写るわけなかったか、とIRじゃなく通常モードにしてみたらますます写らなく(笑)。たぶん望遠鏡でのコリメートならスマホの新しい機種の方が断然よく写ると思います。

というわけで、天体への使用はかなり厳しそう・・・・まあこれは完全に目的外使用(笑)。SVBONY公式でも天体観測できるとは言ってません。

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SVBONY SA206、暗視双眼鏡として最低限の機能がオールインワンになっていて非常にローコスト化を頑張っている感じですが、やはり視野が狭すぎることによる使いにくさは否めないですね。ワイドコンバーションレンズで視野を広げてみようかと試みましたけどピントが来なくてダメでした。

せめてFOVが30°×15°くらいあればかなり使いやすくなると思うのですが、センサーやレンズのコストも相当上がってくるので今の値段ではまず不可能でしょう。10°×5°の現状では動き回る夜行性の野生動物を捉えるような使い方をしようとすると難度が高すぎる気がします。

これはあれでしょうか、望遠鏡で言うとNEWTONYみたいなもので、スペックがピーキーすぎてエントリーモデルとしては適してないけど、引き出しの多いベテランが改造やイレギュラー運用をして楽しむには最適のアイテムなのではないでしょうか? ひょっとして、赤外線照射型暗視スコープに詳しい方ならものすげえ面白い使い方を発案されるのかも?

・・・例えば古文書の消えてる文字が赤外線照射で浮き上がって来るとか?
・・・あと、黄砂とかで観光地の遠景が見えないとき赤外の透過力で見えるとか?


「SVBONY SA203 暗視双眼鏡」はあなたの超運用を待っている!?
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