ニュートン式をメインで使っておられる皆様はしばしば光軸を合わせておられることと思います。
光軸合わせはいろいろやり方があると思うのですが、自分の場合
① 斜鏡の中心を鏡筒の中心に置く(スパイダーのネジで調整)
② 接眼部からレーザーコリメーターを照射し、斜鏡の中心(もしくはF値に応じた偏心位置)にレーザーが当たるよう斜鏡を前後させる(押しネジ引きネジで調整)
③ レーザー光が主鏡のセンターマークを射るように斜鏡のネジを調整する
④ レーザーコリメーターに光が戻って来るように主鏡のネジを調整する
といった感じなのですが、斜鏡の調整ネジは動きの支点が鏡面からだいぶ離れているため「首振り」が起こります。これはどういうことかと言うと、
③の調整によりせっかく最適位置に置いた①と②が微妙にズレる
という台無しな現象が起こると言うことです。もちろんそのズレは比較的小さなものなので①②③を何回かやることで許容範囲に追い込んで行けます・・・が、スッキリしないことこの上ありません。この問題はニュートン式愛好家の間ではずいぶん以前から指摘されていたものの、特に対策が講じられることもなく数十年が経過している感があります。
自分自身、せっかく合わせた①②がずれなくても済むような③の調整機構のアイディアをずいぶん以前に思いついてはいたのですが、当時の環境では製作が無理でした。そのため試作もできてなかったのですが、先日FDMの3Dプリンター(FLASHFORGE Adventurer5M Pro)を導入し、初めてその構想を実現する環境が整ったものです。
小さいと工作が大変なので、30㎝F5ドブソニアンの70㎜斜鏡用のものを作ります。とりあえずCADでモデリングし、
3Dプリントします。
これだけだとどういう機構かよくわからないと思うのですが、要は自由雲台のようなボールマウントです。
左の斜鏡ホルダーから出ている丸棒の基部が、斜鏡中心の表面に球心を持つ球のRになっており、筒先に同じRを持つ筒状の部品で受けます。
もともとはホルダーの裏側に半球がついてるイメージですね。
この筒状部品の中に差し込まれた丸棒が3方向からのφ3㎜のネジで動かされることで斜鏡表面の中心を支点に向きが変わります。
上と左の押しネジを90°に配することでXYに調整が可能。右下のは引きネジですがバネで突っ張っているのでここの締め込みはテンション調節するのみ。調整はXYのネジのみの操作でOK(ただしこのように引きネジにバネを使った構造にすると調整は速くなりますが、車で運ぶなどした場合の衝撃でズレやすくもなりますのご注意)
ホルダーの丸棒の先端にもφ3㎜のネジが切ってあるのですが、ここをバネ付きのネジでスパイダーとの連結部分と結合します。
ちなみに、このネジの頭は調整に伴って動くことになります(そのためバネで適度なテンションと可動性が両立させようとしている)。また調整が終わった後このネジを締め込むことによりロックされるので先に述べた衝撃でズレやすくなる問題を軽減することができます。
スパイダーは市販の金属製のもの。
このスパイダー部分が弱いので斜鏡の調整機構をロックしても結局は車で運ぶと光軸ズレると思われます(笑)。それなりの重量物である斜鏡が弱い構造物の先にオーバーハングしてるという構成も問題かも・・・
さてその辺は今後の課題とし、斜鏡も取り付けて・・・と。
30㎝鏡筒に取り付けます。
ネジを回してみますと斜鏡が今まで見たことのない挙動を示しています(笑)
悪くないですね。レーザーコリメーターの光条も素早く主鏡の中心を狙うことができました。
問題は少し剛性感が弱い? くらい。丸棒の先をもっと大きな円形プレートにしてそれを「XY押しネジ+バネ付き引きネジ」にすればいいのかも知れません。バネももっと強い方が良さそうかな。ただバネを使うのは毎回光軸を調整する前提なので、一回合わせた光軸を絶対にずらしたくない場合は押しネジ引きネジ、さらには親子ネジ等でガチガチにロックした方がいいかも。
製作前、最大の懸念が「球のRに沿ってスムースに動いてくれるだろうか」だったのですが、決して滑らかとは言えない3Dプリンター造形物の表面どうしの摺動にもかかわらず全く問題はなく、その点は杞憂に終わっています。あまり完成度の高いものは作れませんでしたが、それなりに優れたコンセプトの機構ではないだろうかという、まずまずの手ごたえはありました。
***
自分以外にこのタイプの調整機構を現実に試作した例を他に知りませんが、アイディア自体は誰でも思いつくものだと思いますので、もっと優れた製作にグレードアップして下さる方をお待ちしております。
万が一、どっかのメーカーが量産品に採用してくれるようなことがあれば、多くの方が恩恵を受けることができると思いますのでこんなにうれしいことはないのですが・・・
最後に「ででん」な
★★★お約束★★★
①まさかとは思いますが、この機構を特許なり実用新案なりを出願して権利化するのはもうダメですよ。わたくしがブログに上げた時点で世間一般に周知の方法になってます。
②もちろんわたくしも著作権は主張いたしません。皆さんで改良してニュートン式が今以上に素晴らしい望遠鏡方式となる一助になれば幸いです。
光軸合わせはいろいろやり方があると思うのですが、自分の場合
① 斜鏡の中心を鏡筒の中心に置く(スパイダーのネジで調整)
② 接眼部からレーザーコリメーターを照射し、斜鏡の中心(もしくはF値に応じた偏心位置)にレーザーが当たるよう斜鏡を前後させる(押しネジ引きネジで調整)
③ レーザー光が主鏡のセンターマークを射るように斜鏡のネジを調整する
④ レーザーコリメーターに光が戻って来るように主鏡のネジを調整する
といった感じなのですが、斜鏡の調整ネジは動きの支点が鏡面からだいぶ離れているため「首振り」が起こります。これはどういうことかと言うと、
③の調整によりせっかく最適位置に置いた①と②が微妙にズレる
という台無しな現象が起こると言うことです。もちろんそのズレは比較的小さなものなので①②③を何回かやることで許容範囲に追い込んで行けます・・・が、スッキリしないことこの上ありません。この問題はニュートン式愛好家の間ではずいぶん以前から指摘されていたものの、特に対策が講じられることもなく数十年が経過している感があります。
自分自身、せっかく合わせた①②がずれなくても済むような③の調整機構のアイディアをずいぶん以前に思いついてはいたのですが、当時の環境では製作が無理でした。そのため試作もできてなかったのですが、先日FDMの3Dプリンター(FLASHFORGE Adventurer5M Pro)を導入し、初めてその構想を実現する環境が整ったものです。
小さいと工作が大変なので、30㎝F5ドブソニアンの70㎜斜鏡用のものを作ります。とりあえずCADでモデリングし、
3Dプリントします。
これだけだとどういう機構かよくわからないと思うのですが、要は自由雲台のようなボールマウントです。
左の斜鏡ホルダーから出ている丸棒の基部が、斜鏡中心の表面に球心を持つ球のRになっており、筒先に同じRを持つ筒状の部品で受けます。
もともとはホルダーの裏側に半球がついてるイメージですね。
この筒状部品の中に差し込まれた丸棒が3方向からのφ3㎜のネジで動かされることで斜鏡表面の中心を支点に向きが変わります。
上と左の押しネジを90°に配することでXYに調整が可能。右下のは引きネジですがバネで突っ張っているのでここの締め込みはテンション調節するのみ。調整はXYのネジのみの操作でOK(ただしこのように引きネジにバネを使った構造にすると調整は速くなりますが、車で運ぶなどした場合の衝撃でズレやすくもなりますのご注意)
ホルダーの丸棒の先端にもφ3㎜のネジが切ってあるのですが、ここをバネ付きのネジでスパイダーとの連結部分と結合します。
ちなみに、このネジの頭は調整に伴って動くことになります(そのためバネで適度なテンションと可動性が両立させようとしている)。また調整が終わった後このネジを締め込むことによりロックされるので先に述べた衝撃でズレやすくなる問題を軽減することができます。
スパイダーは市販の金属製のもの。
このスパイダー部分が弱いので斜鏡の調整機構をロックしても結局は車で運ぶと光軸ズレると思われます(笑)。それなりの重量物である斜鏡が弱い構造物の先にオーバーハングしてるという構成も問題かも・・・
さてその辺は今後の課題とし、斜鏡も取り付けて・・・と。
30㎝鏡筒に取り付けます。
ネジを回してみますと斜鏡が今まで見たことのない挙動を示しています(笑)
悪くないですね。レーザーコリメーターの光条も素早く主鏡の中心を狙うことができました。
問題は少し剛性感が弱い? くらい。丸棒の先をもっと大きな円形プレートにしてそれを「XY押しネジ+バネ付き引きネジ」にすればいいのかも知れません。バネももっと強い方が良さそうかな。ただバネを使うのは毎回光軸を調整する前提なので、一回合わせた光軸を絶対にずらしたくない場合は押しネジ引きネジ、さらには親子ネジ等でガチガチにロックした方がいいかも。
製作前、最大の懸念が「球のRに沿ってスムースに動いてくれるだろうか」だったのですが、決して滑らかとは言えない3Dプリンター造形物の表面どうしの摺動にもかかわらず全く問題はなく、その点は杞憂に終わっています。あまり完成度の高いものは作れませんでしたが、それなりに優れたコンセプトの機構ではないだろうかという、まずまずの手ごたえはありました。
***
自分以外にこのタイプの調整機構を現実に試作した例を他に知りませんが、アイディア自体は誰でも思いつくものだと思いますので、もっと優れた製作にグレードアップして下さる方をお待ちしております。
万が一、どっかのメーカーが量産品に採用してくれるようなことがあれば、多くの方が恩恵を受けることができると思いますのでこんなにうれしいことはないのですが・・・
最後に「ででん」な
★★★お約束★★★
①まさかとは思いますが、この機構を特許なり実用新案なりを出願して権利化するのはもうダメですよ。わたくしがブログに上げた時点で世間一般に周知の方法になってます。
②もちろんわたくしも著作権は主張いたしません。皆さんで改良してニュートン式が今以上に素晴らしい望遠鏡方式となる一助になれば幸いです。
コメント
コメント一覧 (2)
ニュートン反射の光軸調整の革命ですね。
これは是非普及させたい新機構です!!
uwakinabokura
がしました