ZWO Seestar S30、スマートフォンで操作するオールインワンの「スマート望遠鏡」ですが、日本国内では2月21日発売のそれが納品されました。
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先行機種としてはは5㎝F5のS50があるのですが、S30は3㎝F5、さらにコンパクトなパッケージングは「你的掌上天文台」なのだそうです。
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掌に乗らなくもないですね(笑)

とりあえず窓ガラス越し、薄雲越しの太陽を見てみます。
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太陽モードはこんな感じなんですね。フルディスクと4倍に部分拡大ができます。
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まあ薄雲越しでしたのであんまりよくは見えてないですね。本番は夜!

夜は良く晴れました。AZ-GTiの三脚に載せ2階のベランダに設置。
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これを快適な1階の居間からコントロールする「ぬくぬく電視観望」が想定した運用です。

例えばAZ-GTiあたりは非常に汎用性の高い架台ですが、最初の「アライメント」ってやつが面倒くさく、S30のようなスマート望遠鏡ではアライメントをすっ飛ばしてポン置きで開始できるのが大きなメリットですね!

まずは馬頭星雲。
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左がスマホのコントロール画面のスクショ、右が保存される画像ですね。10秒露出を20分スタックした結果になります。なぜか左上の星像が放射状に長く伸びているので対物の光軸中心がセンサー中心から右下方向に少しずれて(さすがに自分で調整は無理な気が)いるのではないか? という感じですけど、まずまずの写りかとは思います。センサーはピクセル2.9μmのIMX662なのでそれほど高感度な感じはないですね。

露出は10秒、20秒、30秒から選びますがこの日は全部10秒でやってます。フィルターは対象によってUV/IRとデュアルナロー(ZWOの”Duo Band Filter”が搭載されている模様)が自動で切り替わるようです。コントロール画面の右上にフィルターのアイコンがあってこれが赤色の時はデュアルナローのようです。

続いてばら星雲。そのままだと画角に収まりきらないのでパノラマ機構で視野を1.5倍に広げます(パノラマは2倍まで可能)。
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左が開始直後、周辺に向かって望遠鏡の筒先を振って少しずつ視野を広げ、約30分でコンプリート(右の画像)・・・しかし、肝心のばら星雲があんまり出ない。おかしいなあ、輝度は馬頭とそう変わらんよね?

と思ったら右上のフィルターアイコンがグレーになってる。ああそうかUV/IRになったから赤い星雲のコントラストが上がらないんだな、しかし、ばら星雲だと導入した時デュアルに自動で切り替わるはずだが? なのですが
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「ばら星雲」で導入するとデュアルナローが効いてそれなりに写るのですが、上の画像のように写野の中心からズレるのでパノラマ機能使って撮った時は手動で微調整して真ん中に持って来てたのですが、それにより対象が散開星団のNGC2244になってしまったようで、S30が「あ、対象天体が散開星団だからフィルターはUV/IRね」と有難迷惑な判断をした模様(笑)。

いったん導入してスタックが始まるとフィルターアイコンをタップしてもフィルターが切り替わらないので、どうやってもばら星雲中心の写野でデュアルナローに切り替えることができませんでした(その後、いったん撮影を中止することによりフィルターアイコンがアクティブになり、切り替えが可能になることが判明しております

デュアル・ナローでのOⅢの写り方を見たかったので次はNGC2359で検索して「トールの兜」へ。
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あ、フィルターアイコンがグレーのままでデュアルナローになってない。これだとダメですね、ほとんど写りません。後で見るとNGC2359のカテゴリーが「星団・銀河」になってました。これは違う気が。トールの兜は輝線星雲ですよね・・・

しかし、対応策をその後発見。SH2-298で検索・導入すると・・・
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フィルターアイコンが赤くなって、ちゃんとデュアル・ナローバンドを使ってくれました。しかしこんなやり方なかなか思いつかんて(笑)。トールの兜の写りも今一つ。まあこの辺は今後30秒露出で試してみる必要がありますね。

なら連続スペクトル物はどう出る? というわけで、M81、82
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うん、悪くないですね。これなら春の銀河巡りを皮切りに一年かけて「エスサンマルで見る小宇宙」のシリーズをやってみても面白いかなと思います。

次にNGC2903で「AIデノイズ」の機能を試してみました。
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左がデノイズなし、右がありですが・・・対象天体が小さすぎてわからないですね(笑)

というわけで面積体を求めて、すでに西に大きく傾いたM42で。
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左がデノイズなし、右があり。うーん、何だか色も不自然になるし、ノイズが減ると言うよりボケてるだけのような・・・

さて、本体のバッテリーも残り少なくなって来たので最後にM51の中央拡大でデノイズの効果を・・・ですが(左がなし、右があり)
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あ、やっぱりこれはあきませんな。ノイズを消そうとするあまり構造まで消してる。現状では安易にデノイズ機能を使うより時間をかけてスタック枚数を増やしたほうがよさそうです。

というわけでM51を13分スタックしたところでバッテリー残量が0になり終了。
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フル充電から約5時間半、内蔵バッテリーで稼働できました。今回は外気温3℃でしたので暖かい時期だともう少し持つかもしれないですね(逆に厳寒地ではかなり短いかも)。ちなみに対物レンズのヒーター機能もあるのですがバッテリーの切れが早くなるそうなので今回は使ってないです。

バッテリー切れは本体とのS30との接続が切れるという形で知ることになりますが、何だか、太陽系外に出た探査機との通信が途絶えたみたいな感慨がありました。(笑)

なお、バッテリー切れでも、ちゃんとホームポジションに鏡筒を戻して終わっているのには感心。
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さて、まだまだ全く使いこなしてませんが、ファーストライトの印象で。

良かった点
①アライメント不要で導入精度も良い
②予想以上の小型軽量
③3㎝F5、1/2.8”センサーの電視観望としては納得の性能


少し残念だった点
①左上の星像が放射状に長く伸びる
②パノラマ機構が思ったよりも時間がかかる
③AIデノイズには今後の改良を望みたい
④フィルター切り替えの使い勝手が悪い


①はZWOがどう考えるかですね。この程度だと不良だとは言えないとか。もしそうだとすればこれから購入する人はこの星像が許容できるかどうかを自問した方が良いかも知れません。
②は機能上やむなしか
③これはバージョンアップでソフト的に向上の可能性がありますね
④に関しては導入するとすぐ撮影に入ってフィルター切り替えができなくなるので、一度撮影を中断してフィルター切り替えすればよいことがわかっています。

さて、S30の運用については今後もいろいろ確かめて行こうと思います!