前回SeestarS30にて「赤道儀モード」を使った時に極軸を合わせ、その三脚位置を自宅ベランダにマークしてあるのですが、今回はそこに「ポン置き」することで実用的な極軸設定が可能か? という検証です。
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月齢14で月の影響もありそうだけど強引に行きます(笑)
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ベランダのマーク位置に三脚石突を合わせただけですが、方位0.6°、高度0.7°のズレに留まってて意外にポン置きの再現性もバカにならんのが判明。

さてこれなら極軸のセッティング精度的には問題なさそうなのでM81、82方面でスタート・・・しかし?
赤経ズレ
何だかこれ、赤経方向に星が流れてやしませんか? この後、西に傾いたばら星雲とか、南に低いM83とかいろんな方向で試すも定量的に赤経方向に流れるのは変わらず。
極軸セッティング不良で赤緯方向に伸びるんならわかるんですが、赤経方向とは?
しかも30秒程度の露出で星像が伸びるようでは実用性が厳しく・・・

この件に関してXの方で何人かの方とやり取りさせてもらい、極軸(経緯台モードでの水平軸)のバックラッシュが問題ではないかと言う話になりましたが、確かに軸を回してみると一定のガタがある(おそらくフリクション軽減のための適正な量)のでそれを吸収するまでのモーターが空回りする時間には追尾がおこなわれないことになりますよね、確かに。

ここで個人的な推測ですが、バックラッシュ吸収中の追尾されてない状態で一番最初の画像処理を設定すると赤経方向(画像の水平方向)に伸びた星像を修正する初期設定になってしまい、それがその後の(追尾がうまく行っている)点像の星像に適応されることで赤経方向に定量的に星を流す加工になってしまう場合があるのではないか? と思い、いったん電源切って再設定してみたところ、果たして赤経方向の伸びはおさまった模様・・・
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しかし全く的外れの当て推量であることも十分考えられるので、この件に関しては今後運用実績を積み重ねて発動条件を特定していく必要がありそうです。

さて、この後気を取り直して(?)PLAN機能を走らせ、いつものように寝ました(笑)

そして朝起きると極軸回転により電源コードが本体を一周半ほどしていました。
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PLAN機能の徹夜運用では「レンズヒーター:ON」が必須(実際、この日も本体にだいぶ結露していました)、どうしても有線による電源供給を強いられるので、今後この「コードからまり問題」も対応策を考える必要がありそうですね。

さて、この日は雲が通った時間帯も多くデータが残っていたのは遅い時間帯の夏の銀河方面ぐらいでした。

M17、44分。左がAIデノイズなし、右がありです。
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M16、53分。同じく左がAIデノイズなし、右があり。
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うーん、この2つの天体に関してはAIデノイズかけないほう一番淡い部分出てる感じでしょうかね。いや単に赤の彩度が高いだけかな(笑)

M8・20、46分。ギリギリ両天体が画角に入ります。左がAIデノイズなし、右がありです。
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やはりデノイズなしは緑っぽくなってしまうので、カラーバランス的にはAIデノイズかけた方がいい感じですね。いずれにせよM20の反射星雲の部分をもう少し出したいかなあ・・・

しかしここで新たな問題に気づきました・・・
どの画像も上の方の星像が二重になっている!(見ろ、星がまるでアリのようだ・・・)
上星二重
これは経緯台モードでは9時間越えのスタックでも起こらなかった現象です。また、赤道儀モードでも21分ぐらいまでのスタック(今回だと上のM3とか)では起こってません。これはおそらくアプリ上の誤認識の問題? だと思うのでおそらくアップデートで解決するはずですが、ユーザー側ではどうしようもないので早急に善処して欲しいところですね。

とは言うものの、今回、S30赤道儀モードポン置き時短セッティング自体は一定の成功ということでOKでしょうか? 長時間スタックした時の画面上部星二重問題さえ解決されれば新たなる露出時間延長の扉が開かれると思われます。

これから夏に向け、視直径の大きいHⅡ領域のシーズンになりますが、S30赤道儀モードにより長時間露出が可能になる見込みなら、個人的に未踏だったHⅡ領域の淡い部分にチャレンジできます。それは対象天体の数と各個に要する露出時間を考えますと「晴れたらS30稼働」を繰り返したとしても1シーズンではとても終わりそうにないうれしい悲鳴の案件、なおのこと星二重問題は早く解決してくだせえ、です(笑)。


***おまけ****


普段自分は太陽の観察はPSTにより「ガラス越し室内から冬はぬくぬく夏はひやひや観望」(笑)にておこなっているのですが、S30でももちろん太陽を見ることができます。
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せっかくですので、スマート望遠鏡によるガラス越し観望の影響を検証してみました。左が窓ガラス越し、右がガラスを開けてダイレクトです。
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ガラス越しガラスなし
あ、これはガラスによる劣化は明らかですね。PSTによる656nmのHa単色光ではガラスの影響は軽微だったのですが、それよりもっと短波長域を含む連続光ではそうはいかないようです。

まあ、晴れたら太陽見るのはPSTなので、S30をこの目的で使うことはないのですけど、一応(笑)