SeestarにはFraming機能というのがあって、対象天体を中心に周囲に鏡筒を振って撮影した画像を合成することで写野を拡げる「モザイク撮影」ができます。ノーマルの写野に対し「Magnification」で1~2倍までが設定(2倍の状態で面積比4倍)できます。

例えばノーマル状態のS30では、ばら星雲は写野をはみ出してしまうのですがFramingの「Magnification」を1.4倍程度に設定することで主要部の全景(淡い部分はもっと広がってはいるのですが)を収めることができます。
(左画像:AIデノイズあり 右画像はモザイク撮影途中の動作画面)
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右画像の青い枠が1枚で撮影できる範囲です。この面積で対象天体の周辺をなぞるようにして得た画像を合成すると左画像になるのですが、つなぎ目などは全く分からないですね。さすがのソフト処理です。

このモザイク撮影は経緯台モードでもできるのですが、1枚1枚が設定した写野に対して斜めになることが多く四角の頂点(?)が「捨て画面」となり、時間の割に効率が悪い感じがしていました。しかし赤道儀モードだと全写野がもっと早くフォローされる感じがありましたので、縦横が赤経赤緯になって「捨て画面」が少なくなってるかもしれないですね(あくまで印象。定量的には検証してません)。

ちなみにモザイク撮影を行う時は露出時間を10・20・30秒のうち最短の10秒に設定した方が、当然のことながら全写野のフォローが早いです。

また、S30はセンサーが回転しないので基本的に縦横のアングルが固定(経緯台モードでは底辺が地平線、赤道儀モードでは上が北になる)なのですが、Framingの「Rotation Angle」で360°自由に回転させられます(ただし回転させるだけで写野は拡げなくても鏡筒は振ることになるので時間はだいぶかかる)。

例えばマルカリアンの鎖ですと普通に撮ると、東西にのびた「鎖」が短辺をはみ出すので、全景を収めるには90°ほど倒す必要があります。さらに「Magnification」を1.5倍にするとM90あたりまで写野を拡げることができました。
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各銀河は小さくてどれが何だかわからないので、右の画像では天体名を入れてみました。通常、赤道儀モードでは縦長画面の上が北になるのですが、この画像では右が北になっています。

上の画像を得るために実際に撮影された画像を別口でスタックするとこんな感じです(これは画像の上が北)。
マルカリアンの鎖
これを見ると実際に設定された画角より少し広い範囲を撮影していることがわかりますね。

さてこの後はM100、M51、北アメリカを対象天体に設定したPlanを走らせて寝ました(笑)。

M100のデノイズなしとあり。
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M51のデノイズなしとあり
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北アメリカは2倍モザイクでトライしてみましたが
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高度の低い状態から無理に撮ったので、ベランダの手すりが画面に入ってしまい変な状態でスタックされ失敗(笑)。まあこれはそのうちリベンジですな。

しかし、Framing機能によるモザイク撮影、時間はかかるにせよ、S30の1/2.8”センサーに最大1/1.4”相当の画角を持たせることができ、追加コスト実質ゼロ(ユーザーサイドの視点)でラージフォーマット化を実現できるコンセプトは秀逸。比較的技術の必要なモザイク撮影・合成が万人に解放された意義も大きいです。

正直、個人的にはS30の発売前にこの機能を知ったのが購入の決め手になりました。これを実用レベルまで持って行ったZWOのソフトウェア開発陣は素晴らしいですね!


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まあしかし、今後リリースされるらしい? SeestarS30proには1/1.2”のIMX585が搭載されるそうなので、そっちの動向にも目が離せません・・・しかしノーマルS30の1/2.8”でも周辺星像破綻してるのにセンサー面積大きくしてその辺ちゃんと収められるのか? という疑問がなくもなくないのでS30pro(S50proの情報もあり)の方はリリースからしばらくは様子見ですかな(by S30に飛びついて懲りた人)。