”STC Astro Duo NarrowBand Filter”と” ZWO Duo-Band Filter”を電視観望にて比較します。
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左がSTC、右がZWOになります。STCのほうがちょっと見た目の色が濃いのですが、それぞれ、下のグラフのような周波数特性です。赤のがSTC、青のがZWOです。
比較
STCは、赤の帯域が、ZWOは青緑の帯域がやや広いという違いがありそうですね。
これで見ると、ZWOの方はHβ辺りも通しそうなのですが、広告によれば、
(※OIII付近の帯域幅は35nmのため、「Hβ輝線(475nm)」はカットされています。)
とのことです。

さっそく、「ミザールBN-80改・8cmF4屈折+AZ-GTi経緯台+SharpCap」にてベランダ電視観望で比較します。
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もちろん、この後サッシは閉めて、暖房をかけた室内で、ぬくぬくと検証を実施しております。

対象はハート星雲。先のがSTC、後のがZWOです。
stc heart


ZWO heart
STCのほうがコントラストが良いように出てしまいましたが、これは後処理の違いです。電視観望ではその都度調整するので、どうしても同じように処理ができないんですね。
ただ、それぞれに処理を最適化することで、どちらのフィルターも同レベルの画質に到達できるかなとは感じました。

しかし、電視観望での実用上、個人的には2つの点でSTCに軍配を上げたいです。

1 STCのほうが圧倒的にカラーバランスを取りやすい
ZWOを電視観望に使用した場合、そのままでは青緑の色が強く、SharpCapで最初の一枚画像の時、赤を最大に上げてもカラーバランスが取れません。そのため、ライブスタックのモードにしてから赤をさらに上げる調整の手間が必要なのですが、毎回のことなので「あーいつものやつですね、はいはい」って少し食傷気味にもなります(笑)。この辺の動向は青緑の帯域が広いという周波数特性のグラフが反映されているのでしょうか。その点、STCでは青緑と赤のバランスが良く、一枚画像時点の調整範囲で三色がフラットに収まるので、ライブスタックでの手間が少なくて楽です。

2 同じ条件ならSTCの方がわずかにコントラストが高い
SharpCapのライブスタックを始める前に露出時間1~2秒で対象天体を視野の中央に持って行くのですが、この時のHⅡ領域の見え方などのコントラストはSTCの方が明らかに高いです。赤と比べた場合散乱されやすい青緑の周波数の帯域が狭いからでしょうか。いずれにせよ、視認性がよいので作業効率が高くなります。

で、結論
”STC Astro Duo NarrowBand Filter”と” ZWO Duo-Band Filter”の電視観望での画質は最終的には同じレベルまで持っていけるが、そこに行く手間はSTCの方が少なくて済む。
です。
毎回の画像で少しづつ手間が減るので、トータルでの省力化メリットは大きくなると思います。
特に、ギャラリーに見せるようなときは少しでも早く処理を終わらせたいのでなおさらです。
こういう実用上の利便性はカタログデータには現れない部分ですね。

STC唯一にして最大の問題点は価格。
STC Astro Duo NarrowBand Filter 税込価格: 54,780円
 ZWO Duo-Band Filter 税込価格: 21,100円
(いずれも2インチフィルターでの価格)
この倍以上の価格差をどう考えるか・・・・・あ、ちなみに今回検証に使ったZWOは自前購入ですが、STCはNickさんからお借りしているものです。この場を借りて御礼申し上げます!

最後に、STCによる画像をひとつ。”元旦でもまだ北アメリカ&ペリカンは見られる!”です。
stc
2020年も、望遠鏡&ギターに自分勝手なブログ「浮気なぼくら」にお立ち寄りくださればうれしいです!