ネイワイズ彗星の話題が終わって、次にNEWTONY&MAKSYの話題に移ります。

会議での内容は主に、シベットがこれらの望遠鏡の可能性を光学シミュレーションで提起するものになりましたが、今回、記事にするにあたって画像や説明を大幅に付け加えて内容を少し見なおしました。会議ではこれのダイジェスト版になっています。

まず、NEWTONYより。
IMG_6982
5cmF4 fl=200mmの主鏡は球面鏡でした。
フーコー
発売即入手して一番最初にやったのは鏡面のフーコーテスト。ひょっとして放物面か? と思っていたので球面でずいぶんガッカリした記憶があります。

5cmF4の球面鏡を光学シミュレーションすると、以下の通り。
5cmF4球面 中心20μm
(フリーの光学シミュレーションソフト「POPS」を使用しています)
中心星像20μm、1°の周辺25μmというところでしょうか。付属の10mmアイピース20倍では星像はそれほど破綻しませんが、4mmとかの短焦点アイピースを使うと焦点内外像であきらかに球面収差の影響が感じられました。

ちなみに5cmF4の放物面鏡ではこんな感じ
5cmF4パラボラ 中心無収差
もちろん、中央は無収差。ただし、周辺のコマは球面より盛大に出ます。

さて、球面鏡でもF値によっては実用上放物面鏡と変わらない像質が得られるのですが、たとえば5cmF6球面ですと、このようになります。
5cmF6球面 中心10μm
一気にシャープになって、中心星像は10μm。個人的には一つの基準としてシミュレーション上の星像が10μm以下ならエアリーディスクやジフラクションリングが見えるレベルだと考えています。
このスペックを持つ望遠鏡はutoさんのトラス式テーブルトップ・ドブソニアン「Light Bucket II」ですね。非常にシャープな像を結ぶそうです。Light Bucket IIは光学系以外にも各部のこだわり、仕掛け、独自の構造等、非常に見るべきところが多い望遠鏡で目からうろこが落ちること請け合いですので、utoさんのブログの記事を全て読むことを強く推奨いたします。

さて、5cmF4の球面はそのままでは高倍率はダメなのですが、普及品のバーローを使ってJONES-BIRD光学系を構築し、鋭像を得るという手もあります。

(JONES-BIRD(BIRD-JONSEとも)光学系~ニュートンに一般的なバーローに近い色消し凹レンズを追加した構成)↓
bird-jones
(https://star-hunter.ru/en/black-list/ より)
ちなみにこの光学系を採用している望遠鏡にはTOWAのTANZUTSUやミザールの往年のフラッグシップモデル、CX-150型がありますね(CX-150型は補正レンズが斜鏡の先にあるため、センタリング・スケアリング等を最適化しないと性能を発揮できない場合がほとんどのようです)。

ともあれ、バーローレンズによって、「後付け」のJONES-BIRD光学系となった(?)NEWTONYは別物のようなシャープネスを示し、PL4mm110倍にて土星の輪のカッシニ空隙を確認できるほどパフォーマンスが向上しました。実際に使用したバーローレンズの曲率・ガラス材等が不明のためシミュレーションできませんが、ぜひ球面収差の補正状況を知りたいところではあります。


さらに、NEWTONYの性能向上オプションとしてはレンズレス・シュミット・ニュートンが考えられます。光学系の説明は当方ブログのリンクをご覧いただくとして、M87JETさんがいち早くこの改造に取り組まれています。
Img_5103s
(M87JETさんのブログより)
先端の絞りは41mmとのこと。40mmの絞りを主鏡の球心位置(主鏡から400mm先)に置いた4cmF5レンズレス・シュミットの状態でシミュレーションしてみますと・・・
4cmF5レンズレス 中心12μm
中心12μm、周辺14μmは写真用としてはほぼ完璧な性能と言っていいのではないでしょうか。特に一番上の5cmF4球面と比べると雲泥の差と言っていいと思います。実際、M87JETさんの検証でもそのような結果が出ているようです。

NEWTONYの定番改造、眼視高倍率にはバーロー追加のJONES-BIRD化、写真用にはレンズレス・シュミット化で決定でしょうか?

ちょっと長くなってきたので、以下次回更新にて!
次回は、実際に市販されている球面鏡を使用した安価なニュートン式望遠鏡のシミュレーションをおこないます。