ナイトビジョン・アフォーカルシステム(縮小光学系)を30㎝F5鏡筒につけると、22.4倍、瞳径13.4mmとなります。

ナイトビジョンは30㎝F5の状態でも驚異のパフォーマンスを発揮するのですが、瞳径7mmが限界の通常の眼視に対して、瞳径が21mmくらいまでは利用できます。

そこで、さらなる明るさを求めるために、クローズアップレンズNo5をフォーカサーの内側に入れて、0.65×、30㎝F3.2、14.6倍、瞳径20.5mmのギリギリまで明るくした仕様を試してみました。これも想定通りのパフォーマンスを発揮しましたが、さすがに縮小し過ぎて過修正による逆コマが周辺星像に発生し焦点面とレデューサーの距離を最適にする必要が生じていました(ただし、Hα観望や赤外観望では星像の悪化も目立たないのでこのままでもOKと言えばOKでした)。

また、フォーカサーの内側にレデューサーを着脱するのが非常に不便でしたので、今回、2インチ延長筒にレデューサーを仕込んだ”汎用型”を作ろうと思い立ったものです。

こんな形になりました。
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45mmの2インチ延長筒に、48→49ステップアップリング、クローズアップレンズNo4(49mm)の枠のみ、クローズアップレンズNo5(49mm)と配しています。
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ステップアップリングもクローズアップレンズもそのままでは2インチスリーブに入らないので、ご覧のように周囲を削って径を少し小さくしています(この作業にだいたい6時間くらいかかりました 笑)。

No5をフォーカサーの内側に入れて、0.65×を得た時は焦点面とレンズの距離がおそらく80mmほど。上の組み合わせでは焦点面との距離が約50mm・0.72×となります。あと、延長筒の交換やNo4枠の有無により、35mm・0.79倍、20mm・0.85×の3種類の仕様を得ましたので、これらのパフォーマンスを比較していくことになります。

さっそく試していきます。まずはレデューサーなしの30㎝F5、22.4倍、瞳径13.4mmにてM8(Hα7nmフィルター使用)。
1×
ナイトビジョンはちょっとした迷光も増幅するので、それが入ってしまい見苦しくて申し訳ないです。ごらんのように、F5のレデューサーなしの状態でも周辺像はそんなに悪くないので、コマ補正の必要はなく、レデューサーは主として焦点を短縮し、明るく広視野にする目的で使うことになります。

焦点面までの距離20mm、0.85×、30㎝F4.25、19倍、瞳径15.8mm
0.85×22mm
この画像は16枚合成時に回転方向にずれてしまったみたいですが、眼視で見た限りでは周辺像はそんなに悪くなかったですね。なぜか、レデューサーなしのときは入っていた迷光がなくなっています。
レデューサーは少し周辺光量をカットしてしまうのですが、同時に迷光もカットされたという「ケガの功名」でしょうか?

焦点面までの距離35mm、0.79×、30㎝F3.95、17.7倍、瞳径16.9mm
0.79×35mm
だいぶ視野が広くなって明るくなりました。周辺像も悪くないです。

焦点面までの距離50mm、0.72×、30㎝F3.6、16倍、瞳径18.8mm
0.72×50mm
やっぱりこれが一番明るくなりますね。写真では白く飛んでいますが、眼視では非常に諧調豊かに見えていました。周辺星像は20~50mmでほとんど変わらない(いずれも逆コマが少々)という感じだったので、それなら明るくて広視野のほうがいいということになります。

ただ、レデューサーなしのほうが、星雲のスケールが大きいので細かい構造が見えたのも事実。M8のような輝度の高いものでは倍率を上げたほうが見栄えがするのかも知れません。

というわけで、レデューサーなしの30㎝F5に戻し、M20。
m20
暗黒帯の様子が良く分かりますが、レデューサーを外したことで迷光も復活(笑)。やはりレデューサーは迷光を防止するという副次的な効果があると思われます。

M17
m17
これもよく構造がわかりますが、やっぱり迷光みたいなのが入ってますね。

M16
m16
眼視では創造の柱がよくわかりました!

というわけで、いつもの光害地自宅ベランダ限界等級2等で、Hα観望をおこなったわけなのですが、レデュ―サーによって、明るく広視野になるという挙動に一定の手ごたえはあったものの、

限界まで明るくしても光害地ではそれほど劇的な視認性の向上はなく、むしろ少々暗くなってもスケールを大きくしてバックグラウンドとのコントラストをつけた方が見ごたえのある場合もありそう

という感じでした。

次の週末、新月期に空の暗いところで試してみる必要がありそうです。レデューサーによる明るさの向上でHⅡ領域の淡く広がった部分が見えれば、広い視野も生きてくるはずですが・・・・?!