自宅ベランダで電視観望を行う場合、デュアル・ナローバンドフィルターなどによって光害をカットする必要があるのですが、光害カットの最強版とも言えるのが「Hα単色光電視観望」です!
もとより、天体写真家の皆さんはOⅢ、SⅡ、Hα等々の単色光を別々に(あるいは多連装鏡筒で同時に)撮影し、AOOやSAO等のカラー合成をおこなって作品とされているわけですが、Hα単色光電視観望ではそのようなプロセスをはぶき、単色光のみの「白黒画像」として鑑賞する、やや時代には逆行したバンカラさを持ちます(笑)。「ごっついのうー」
イメージ的には沼澤茂美さんの名著「THE DEEP SKY」の写真を思い浮かべていただければと思います。
渋いですよね!
しかし反面、今の時代では素人の皆さんにはカラー画像の方が受けが良いと思います。
今回紹介するHα単色光電視観望はどちらかというと自己満足的にやっているものですので、割かしマニアックな志向になります。
さて、103aE+R64の時代から、Hα単色光の要素はありましたが、現在ではHα干渉フィルターがありますので、さらに切れ味のよい描写が可能になっております。また、副産物(?)として、レンズの色収差を皆無にする、というメリットもあります。
たとえば、これは「CanonFD200mmF2.8、ASI294MC、AZ-GTi」によるものですが、そのままだとこのように色収差が出ますが、
Hα干渉フィルター(半値幅7nm)使用で、
当たり前のことながら一気に色収差が目立たなくなります(16秒露出)。
200mmの焦点距離でASI294MCのセンサー面積(19.1x13.0mm)だと、フルサイズ換算400mmくらいということになるでしょうか、HⅡ領域の表現に適した画角と言えるでしょう。
200mmF2.8 FDレンズでは他にこのような作例があります。
ばら星雲
さらに、PENTAX 6x7 165mm F2.8 にHα3.5nm仕様を使い露出を32秒に延ばしたバージョンではもう少しカリカリに表現できました(Hα単色光観望では、フィルターの半値幅が狭くなるほど露出時間を延長しなければならない傾向があります)。
まずはM8、20のエリア。
M16、17付近
サドルから三日月星雲
このように、165~200mmあたりの焦点距離では、まさに「THE DEEP SKY」電視観望版とでも言える画角が使えますね!
さらに、14㎝F3.1シュミットニュートンfl=430mm、32秒露出では
馬頭星雲
ばら星雲
こんな感じですね。やはり、Hα単色光では大きく広がったHⅡ領域を狙いたいので、200mmまでの焦点距離が向いている気がします。
さて、今回の記事は電視観望のひとつのバリエーションとしての「Hα単色光観望」を取り上げてみました。通常の電視観望と比べて露出時間がかかるので、最大のメリットである「時短要素」はかなり後退します。白黒画像であることも相まって、電視観望本来の目的からは少し逸脱したマニアックな運用と位置付けることが出来るでしょうか?
さて、エキセントリックな硬派のための「男は黙ってHα」、今後取り組む人は現れるのか!?
(今回の記事の画像は以前ブログに載せたものばかりなので、改めて見ると今一つのものも多いですが、企画の意図を汲んでいただき、その辺はご容赦ください。)
コメント
コメント一覧 (4)
uwakinabokura
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色収差がない分、星像は収束しやすいですが、
ザイデル5収差は色に関係ないので、Hα波長でもしっかり設計された光学系が必要です。
レデューサ込みでペッツバール和がゼロになるボーグの10cmf4アクロマートで
4x5判全面に像面湾曲無くシャープな星像を結んだのを思い出します。
uwakinabokura
がしました