ASI462MCの最大のメリットと言えば(私見になりますが)何といっても近赤外域の感度が高いことでしょう。これは、反射星雲、散開星団、球状星団、小宇宙(銀河)などの”連続スペクトル天体”を電視観望するときに大いに有利に働くと考えています。

今回のテーマは、ASI462MCは、どのようなフィルターを使用したときに”近赤外高感度”の威力を発揮するか確かめようというものです。使用システムは前回同様、76mmfl=280mmF3.7NEWスカイステージ改、サイトロンQBPフィルター、架台はAZ-GTi、SharpCapによる画像処理です。
ElAy8JTU0AAcy6y
ご覧のように月はありますが西に傾いた状態で、空の透明度が良く、限界等級も肉眼で3等星程度まで見える条件でした。

まずは、システムの調子を見るためにM27の2秒、Gain550、QBPフィルターで
m27 2s gain550 qbo 289stackなんと、先日の「限界等級1等+」の時とほとんど変わらない見え方。まあ、輝度の高いM27なので、どんな条件でもそれなりに見えてくれるのでしょうね。

さて、しかし今日の目的は惑星状星雲のような”輝線スペクトル物”ではなくて、小宇宙(銀河)に代表される”連続スペクトル天体”です。指標天体としてはNGC253を設定。フィルターはそのままのQBPにて、4秒露出、Gain500。
253 qbp 4s gain500
qbpf_g
さすが汎用性の高いQBP。なかなか健闘しています。

次に、SVBONY CLSフィルター、4秒露出、Gain500。
253 cls 4s gain500
SVBONY CLSは近赤外域を盛大に透過してくれるので、
88169ec1
露出時間・Gainは同じ条件ですが、QBPの時より少し周辺部が出ている気がします。赤外を通すという意味では、最もASI462MCに適したフィルターと言えるかもしれません。ただし、銀河そのものの彩度はQBPと比べると落ち、白っぽい表現にはなります。

次に、赤色フィルター、これはおそらく600nmあたりより長い波長を通すシャープカットフィルターになると思います。4秒露出、Gain500。
253 R60 4s gain500


(↑これは実際に使ったフィルターの特性曲線ではありませんが、おそらく赤の線みたいな特性のシャープカットフィルターと思われます)
これはもう白黒画像になりますね。淡いところの表現はSVBONY CLSフィルターとそう変わらないので、それならカラーである分だけCLSの方がいいかもしれません。

続いてZWO IR850、8秒、Gain500.
253 ir850 8s gain500
850nm以上の長い波長を通す純然たる赤外フィルターです。
600nmからの赤フィルターと比べて特にコントラストが強くなったということはなく、単純に暗くなって露出が倍かかっただけでした。ただし、東京のような光害一等地ではこのフィルターが威力を発揮するかもしれません。

次はおまけ、オプトロンHα7nmフィルター。32秒露出、Gain600。
253 Ha 32s gain600
フルゲイン、32秒露出をもってしてもここまでしか出ません。HⅡ領域を写し取るのは少々困難なようです。

というわけで、SVBONY CLSフィルターが「最強」と言う結論。先ほどと同じ4秒、Gain500ですが、少しスタック枚数を増やし(358枚)部分拡大してみました。
253 cls 4s gain500 kakudai3
FL=280mmの電視観望でここまで見られれば、とりあえず文句はないレベルですが、やはり本体の彩度が低いのと恒星が「赤外白飛び」(ASI462MCは赤外域ではLGBともに同じくらいの感度を持つのでこの成分は白く表現される)を起こしてしまうのはやむを得ないところでしょうか。

続く、M31、4秒、Gain500
m31 4s gain500
でも、M31、4秒、Gain500でも同じ傾向でした。
m33 4s gain500
M33はもう少しで赤いHⅡ領域も見えそうな気もするのですが・・・・

もっとも、SVBONY CLSフィルターでは、M42のような派手なものでもそんなに彩度は高くできないですね。2秒、Gain500。
m42 2s gain500
馬頭星雲も、「何とか見える」程度。4秒、Gain500。
batou 4s gain550
やはり、小宇宙(銀河)を見たくなります。NGC891、4秒、Gain500.
891 4s gain500 kakudai
NGC1023.4秒、Gain500.
1023 4s gain500
まあ、もうほとんどモノクロの世界。トライXパンドール20℃15分、とかいう触れ込みでも違和感はありません(笑)。

あ、あとSVBONY CLSフィルターでは、プレアデス、4秒、Gain550 や、
m45 4s gain550
球状星団M74、4秒、Gain500 などもやっています。
m79 4s gain500
まあ、いずれも今一つ見栄えはしなかったです。

取りあえず結論としては、

電視観望においてASI462MCの赤外感度をもっとも生かせるフィルターは「SVBONY CLS」、ただしほぼ白黒画像となる

という感じでしょうか。

あと、今回もセンサー面積が小さいことによる画角の狭さから、AZ-GTiの自動導入では視野に捉えきれず、付近を捜索して導入する必要が何回かあった、ということも申し添えておきましょう。
何だか、少しセンサー面積の広いASI385MC(462の5.6×3.2mmに対し385は7.3x4.1mm)あたりが欲しくなってきました・・・(笑)