ASI462MCをDSOの電視観望に使う時の最大の弱点は、センサー面積が狭く(5.6x3.2mm)実視界も狭くなります(たとえばfl=280mmの場合、1.15°×0.66° サイト「カメラ画角の計算」で計算)ので、非常に使いにくい、という部分になろうかと思います。

実際、この弱点は自分が7.6㎝F3.7 fl=280mmのニュトーン反射にASI462MCを取り付け、AZ-GTiの自動導入を行うと視野内に入ってくれない時がある、という形で現れてきました。
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そこで、レデューサーによって焦点距離を短くすることで画角を確保しようというのが今回の企画です。実際に試したのはケンコークローズアップレンズNo4、Revolution ImagerR2付属の0.5×レデューサー、笠井の31.7mmアイピースレデューサー、です。
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結論から言うと、76mmF3.7の放物面鏡に使った場合、クローズアップレンズNo4(画像にはありません)は、強烈な球面収差が出てボツ(センサー面との距離42mm程度)、Revolution ImagerR2付属の0.5×レデューサーも周辺に強烈なコマ(センサー面との距離16mm程度)、何とか実用できそうなのが笠井のアイピースレデューサーでした。
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左から、ASI462本帯、付属のM2→CマウントAD、Cマウント→31.7mmAD(Revolution ImagerR2に付属していた高さの低いもの)、笠井のアイピースレデューサーになります。これらを組み上げるとこんな感じ。この状態でセンサー面とレデューサーレンズの距離が約16mm。この時の縮小率は、実測0.73×でしたので、fl=280mmだとfl=205mmにできるはずです。
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実際にはレデューサーの先にQBP等のフィルターをつけることになります。これで、望遠鏡の31.7mmスリーブに差し込んで使うことができます。
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筒先を76mm→70mmに絞ることでわずかに星像がシャープになりましたので、70mm、fl=204mm、F2.9で使用することにしました(細かいことを言いますと斜鏡による中央遮蔽が28mmありますので、これを差し引くと集光力は口径64mm相当。実質はF3.2程度の明るさになろうかと思います)

画角は、1.15°×0.66° → 1.6°×0.9° とかなり拡がっているはずです。実際、fl=280mmでの網状星雲がこれぐらいだったのに対し(4秒、Gain500 QBPフィルター使用)
ami4s gain500
かなり視界を広げることができ、さらに明るくもなっています。(4秒、Gain450 QBPフィルター使用)
ami 4s gain450
コマ収差は補正されていると思うのですが、わずかに像面湾曲による周辺ピンボケが出ているかもしれません。まあ、天体写真じゃないのでこの辺は「気づかなかったフリ」(笑)で終わらせようかと思います。何より、画角が広がったことでAZ-GTiによる一発導入ができるようになった時短効果のメリットのほうが大きいですね!

さて、70mmF2.9、QBPフィルター使用の状態でいくつか天体を巡ってみます。NGC253、8秒、Gain500。
253 8s gain500
QBPでも露出を少し多くさえすれば、小宇宙(銀河)もそこそこに表現してくれます。小宇宙のパフォーマンスではSVBONY CLSに譲りますが、何にでも使える汎用性の高さがQBPの魅力ですね。この後の画像も全てQBPフィルター使用です。

馬頭星雲。4秒、Gain500。
batou 4s gain500
この時は昇ってきたばかりでコントラストが悪く、本当はもう少し濃く出せるのですけど、まあ何とか形がわかる程度。バックグラウンドがかぶっているので、ライブスタックも時々エラーを起こしていてそれが表示されています(笑)。

エラーと言えば、AZ-GTi(というかドライブソフトのSynScamn)が途中でエラーを起こして追尾が止まるとこうなります。NGC891、4秒、Gain550.
891
続いて、M1かに星雲、2~4秒、Gain400~550。
m1 4s 550-400gain 2
露出時間やGainに幅があるのは、SharpCapのLivestack中にGainと露出時間を数段階変えることでバックグラウンドのムラを軽減できる気がしたからです。実際、あんまり考えずに長時間LiveStack をしますと、バックグラウンドにちりめんノイズ的なムラが現れてきます。こんなやつ↓

m8 1s
露出やゲインの条件を変えることでノイズがランダムに変化し、それがスタックにより平均化されることで、この規則的なムラに対し「ノイズリダクション効果」を出せるのではないか!? と思ったのですが、単に露出時間長いほうがSN比上がってるだけなのかも知れません。その辺がよくわからないですが、どうせLivestack中待ってる時間がヒマなのでダメ元でやってみました(ちょっと甘いかも知れないですが、ひょっとしてSharpCapの新しい操作セオリーになる・・・?)

ともあれ、いくつかそうやってみます。M31 4~8秒 Gain400~550。
m31 4-8s gain550
M33 4~8秒 Gain450~550
m33 4-8s gain450-550
うーん、どうなんでしょう? 何もしないよりはいいような気もするのですが・・・

さて、ASI462MCのようなセンサー面積の狭い、もともとは惑星用として設定されているCMOSカメラをDSOの電視観望に目的外使用するという企画ですが、こんな事を言うと自分の記事のコンセプトを自ら否定することになるのですが

正直、センサー面積の狭いCMOSはやっぱりDSO電視観望には向いてない

と言わざるを得ません(笑)。いくつか理由をあげますと

1 画面の拡大率が高いために、少し明るい星はボテッとしてしまいシャープさが感じられない
2 画面の拡大率が高いために、ノイズが目立ちやすくスタック枚数を増やしたくなるので一枚に10分以上かかり、時短要素が薄い
3 導入が難しく、一工夫必要(これも時短要素をキャンセルする)

などです。個人的には、特に2の要素を許容することができません。

というのも上の画像はいずれも100~300スタックくらいで、だいたい10分から20分ほどかかっているのです(だからヒマになって途中で露出時間やGainをいじってみてはどうかという発想も生まれたと言えます)。これですとたとえば2時間やっても5、6個の天体しか見られません。

しかし、これがASI294MCのようなセンサー面積の広いものですと、20~50スタックで鑑賞価値のあるところまで持っていけるので、1天体当たり2~5分くらいで終了します。そして、このペースならあっというまに10や20の天体をこなすことが出来るわけです。この時短要素こそが、電視観望最大のメリットであり、自分の天文スタイルが現在、明らかに電視観望中心になっている理由とも言えるものです。

ひとつ懸念するのは、これから(DSOの)電視観望を始めようという人が、「まあ初めてだし安いCMOSカメラでいいよね」という理由でセンサー面積の狭いカメラを選択した場合、

一応、見えたけど、いろいろ面倒な手順があるわりに大した結果は得られないなあ・・・

と誤解してしまうことです。本来の電視観望はいろいろな天体が「一つ当たり2~3分、インターバルを入れても5~6分」で次々と見られるというものです。そして、その画質は最低限、下の記事ぐらいのクオリティが欲しいですね↓

このような、たくさんの天体が簡単な操作にてそれなりの画質で次から次へと見られる、という電視観望本来のメリットを味合うことなく、
「電視観望も一応やってみてどんなものかわかった、でも別にそう肩入れするほどのものでもないよね」
ってなっていく流れが目に見えるようなのですね、最初にセンサー面積の狭いものを使うと。この機会損失は非常に残念なことと言えます。

センサー面積が最低限ASI294MC並(19.1x13.0mm)のものがもっと安くなってくれればいいのですが。294のようにハーフサイズぐらいの面積でさらに10μmくらいの巨大センサーによって高感度であってさえくれれば、画素数は少なくてもいいと思うんですよね。こういうスペックのがあればDSO電視観望に理想のCMOSカメラと言えますね(フルサイズくらいのラージフォーマットになると、今度はイメージサークルや周辺星像の問題で対物にコストがかかりますので逆に現実的ではありません)。

まあ、ないものねだりをしても仕方ないので、現状で電視観望の一番おいしい部分を満喫するためには、やはりセンサー面積の広い(19.1x13.0mm)ASI294MCになると思います。
ASI224MCもASI290MCもSV305も、そしてもちろんASI462MCもセンサー面積が狭い(いずれも5.6x3.2m SV305だけは5.9x3.3mm)ので、DSOの電視観望目的では上にあげた、1~3の問題がもれなく付いてきます。(もちろん、本来の目的の惑星用としてはどのCMOSも問題ありません)
百万歩譲る(笑)としても、せめてASI385MC(7.3x4.1mm)でしょうか。

さて、今後、DSOの電視観望に適したCMOSカメラがリリースされることを期待しつつ!