前回、QHY5III485Cをfl=204㎜で電視観望をやったときに小宇宙(銀河)のような視直径の小さなものを部分拡大する必要を感じました。そこで、fl=437mm、合成F3.1 のSP140SS改シュミット・ニュートンを使うことにしました。

しかし、焦点距離が長くなればなるほど画角が狭くなりますので、導入の困難さが出てきて実質運用が難しくなります。この問題の解決をするために考えたのがこれです!
IMG_2091
左の「広視野システム」は前回使った、QHY5III485C+204㎜で、11.3×7.1mmのセンサー面積で画角が、3.2×2.0°と、使いやすい広さになりますね。

右の「中央拡大システム」は、ASI462MC+434㎜で、センサー面積5.6×3.2㎜なので、画角が0.7×0.4°。「広視野システム」の約1/5です。これはとても狭く、とてもAZ-GTiの自動導入でフォローできるようなものではありません。

で、画角の広い「広視野システム」で視直径の大きな天体をフォローするとともに「電視ファインダー」の機能も持たせ、「中央拡大システム」に視直径の小さな天体の拡大を担当させるという、2連CMOS電子観望システムになります!

2つのCMOSはそれぞれSharpCapのウィンドウを開いて画像処理。このような画面になります。
m42 2gamen
2画面でのSharpCap動作も問題ないようです。

「広視野システム」は今回、「中央拡大システム」の電視ァインダーとしての役割に徹し、以下「中央拡大」を中心に見ていきます。現状ではフィルターが取り付けられないので、ノーフィルターにて。

まずはNGC2903 4秒露出 Gain400(ASI462MCのGainは0~600) 95スタック
2903 4s 95stack gain400
かなり構造が出てきましたね! 前回のQHY5III485C、fl=204㎜ 8秒露出、60スタック↓

2903 8s gain40 60stack
とは段違いです。これは、ノーフィルターで全帯域を使っているのと、ASI462MCの赤外感度の高さが生きているのではないかと思います。

さて、反射星雲はどうなるかな? でM78 8秒露出 Gain400 60スタック
m78 gain400 60stack 8s
ああ、悪くないですね。さすがに周辺部はそんなに出せませんでしたが、拡大率が大きいのでそれなりに構造がわかり見ごたえも出てきました。

さてそれでは主目的になる小宇宙(銀河)へ。
M66,65 8秒露出 Gain400 21スタック
m65 66 8s gain400  21stack
なんだか中心がつぶれているような気がしましたので、Gainを400から300に下げてみますと・・・

Gain300 8秒露出 20スタック
m65 66 8s gain300  20stack
その後の画像処理の違いもありますが、65、66とも中心と周辺の輝度差が大きいので、Gainは下げぎみのほうが良さそうです。

ししトリプレットのもう一つ、NGC3628も 8秒露出 Gain300 16スタックで
ngc gain300 8s 16stack
少しコントラストが悪いですね。こっちはそれほど輝度差がないので逆にGainをもう少し上げてみても良かったかもしれないです。まあ、将来、「小宇宙最強」の㏜Bony CLSフィルターが取り付けられるようになればもう少しコントラストも向上させられると思います。

NGC4565 ニードル・ギャラクシー 8秒露出 Gain300 30スタック
4565 8s gain300 30stack
まあ、これも電視観望としては悪くないです。

M82 8秒露出 Gain300 28スタック
m82 28stack gain300 8s
少し雲が出て来たようで、ここで終了。これの相方のM81は果たせず。

さて、今回のCMOS2連装、それぞれのCMOSカメラの特性を生かしたコンセプトが一定の成果を上げた結果になっています。

しかし、このシステムの問題点は

ものスゲー使いにくい


ということにつきます(笑)

まず、左右の鏡筒の光軸を合わせるのが、かなり微妙な操作が必要で時間がかかる、さらに「広視野システム」のほうが長いズンギリボルトの先にありますので、たわみの影響で天体の仰角により「電視ファインダー」の向きが少しずれます。今回、自宅ベランダでの運用なので、その辺は時間をかけて取り組めましたが、出先の観望会などでの運用は難しい印象です。
IMG_2092
QHY5III485CもASI462MCもピクセルサイズは同じ2.9μmなので、センサー面積当たりの解像度は同じです。それなら、最初からfl=437㎜の鏡筒にセンサー面積の広いQHY5III485Cを取り付けて、モニター上で中央拡大するという「鏡筒1本システム」のほうが運用上シンプルでいい気もします。

ただ、ASI462MCのほうが近赤外感度が高いので、連続スペクトルの天体には圧倒的に有利(たぶん露出が半分くらいで済んでいる)な面もありますので、判断が難しいところですね。
まあ、この辺の運用は今後のブラッシュアップ次第でしょうか。

理想の電視観望システムの、明日はどっちだ!?