前回、マルミR2フィルターにて、ASI462MCによる小宇宙(銀河)の電視観望がそれなりの成果を上げましたが、今回はさらに突っ込んでこの目的に最適のフィルターを選定いたします。

この企画は以前に一回やっており、SVBONY CLSの「優勝」
だったのですが、その後、サイトロンIR640proを取得しているのでそれも含め改めておこなってみました。

ASI462MCには、fl=437mm、合成F3.1 のSP140SS改シュミット・ニュートンを使い、QHY5III485Cによる電視ファインダーでの導入を併用する2連装システムになります。
IMG_2216
この日も快晴ではあるものの透明度が悪く、2等星がかろうじて見えるかな、くらいの条件です。

やはり対象は一番先に昇ってくるNGC2903になりますね。

ではいきなり「前回優勝」のSVBONY CLSフィルター
ngc2903  8s 90stack gain300 cls
ngc2903  8s 90stack gain300 cls
これは先日のR2フィルターと同じ、8秒露出、Gain300、ですが写りはほぼ同じですね。SVBONY CLSフィルターはこのような特性を持っており、比較的広いバンドを通すのですが、
88169ec1
赤外域はほぼ素通しですので、この帯域の影響が強く、ほぼ彩度のないモノクロ画像に近くなっていますね。

続いて、サイトロンIR640pro
ngc2903  8s 58stack gain300 ir640pro
ngc2903  8s 58stack gain300 ir640pro
うーん、これはSVBONY CLSよりわずかに劣ってしまいますかね?
このフィルターはこのように非常に切れの良いロングパスの特性を持っているのですが、
graph_IR640PRO
SVBONY CLSと違って、460nm前後の帯域を通さない分、小宇宙の表現が劣ってしまった感じでしょうか。当方宅は2~3等は見える「中程度の光害地」なので、460nm前後の光害もそれほどではなく、この帯域も使った方が小宇宙のコントラストを上げられるようです。東京都内など「光害一等地」での検証ではこれが逆転するかどうか非常に興味がありますね。

それなら、さらに長波長域に振ってある、サイトロンIR850フィルター
でやってみると?
ngc2903  8s 66stack gain300 ir850
ngc2903  8s 66stack gain300 ir850
ああ、やっぱり。使える帯域が少し狭くなった分、小宇宙の淡い部分が表現されなくなっていますね。
しかし、これも東京都内などでは違う結果かもしれません。

これならむしろ、HⅡ領域・惑星状星雲から小宇宙まで幅広い汎用性を示すサイトロンQBPのほうがよさそうです。
ngc2903  8s 81stack gain300 qbp
ngc2903  8s 81stack gain300 qbp
SVBONY CLSには及びませんが、デュアル・ナローバンドであることを考えると大健闘。
QBPはこういう特性。
qbpf_g
透過する輝線の帯域が比較的広いうえに、このグラフでは載っていませんが赤外域を一部通しているので、連続スペクトル天体にもかなりのパフォーマンスを発揮するという唯一無二のフィルターです。
露出時間を長くすることで、小宇宙の表現が向上するという特性もありますので、Gainを400に上げ、16秒露出でもやってみました。
ngc2903  16s 81stack gain400 qbp
ngc2903  16s 81stack gain400 qbp
うーん、どうかな? 今回はあんまり変わらなかったかな?

あと、おまけのHα7nm干渉フィルター
ngc2903  16s 19stack gain500 Ha
ngc2903  16s 19stack gain500 Ha
全然ですね(笑) 16秒、Gain500でやっとライブスタックが成立しました。

どうやら、当方自宅の条件での小宇宙の電視観望には、やはりSVBONY CLSが最強のようです。

露出時間を16秒に延ばしGain400でもう少し周辺部を出そうとしてみるとこんな感じ
ngc2903  16s 43stack gain400 cls
ngc2903  16s 43stack gain400 cls
先日のマルミR2フィルターより諧調が豊かに出せている気はしますね。

というわけで、この後、ASI462MCとSVBONY CLSフィルターによる「オールナイト春の小宇宙巡り」に突入いたしました。その模様は次回更新にて。乞うご期待!