今最も熱いジャンル、「近赤外利用」を語る会議をおこないました!
双天会#10kakou
会議では近赤外利用について本当に多岐にわたる話題が語られ、レポートもまとめきれないのですが、内容のごく一部を載せておきます。

まず、天リフ編集長のフィルターレス改造α7sによる近赤外利用です。今でこそブームの兆しが伺える近赤外ですが、まだ誰も注目していない時期(約7年前? だったか?)にデジタル一眼を使っておこなっておられたのはさすがです。本当の先駆者ですね。
銀河 阿蘇の河口
撮影データやコメント等がそのままご覧いただけますが、赤外撮影により阿蘇火口の「熱」が表現されているという、教育効果もあります!
ginnga
こちらはM8、M20 をHα~近赤外利用で、と、夏の銀河を720nm以降の近赤外域で。右上には”スネーク”S字状暗黒星雲もくっきりと!
orion leo
M42も背後に星が「透けて見える」独特の表現、小宇宙(銀河)に関しては光害地でも十分に撮影できる手ごたえをつかんでおられたようです。
しかし、その後通常の撮影の方に注力したので赤外の方は棚上げになっていたとも。
ここに来て、時代がやっと編集長に追いついてきたとも言えます。

さて、昨今のブームの”火付け役”とも言えるcokatooさんは13cmによるライブ中継をおこなってくれました。
cokatoo 2903
このNGC2903は「取り急ぎ態勢」で中継してくださったので、ダークを引く等の処理をしておらずちりめんノイズが出てはいるものの、何と露出わずか2秒で銀河の腕の周辺部まで表現され、SQM18等台光害地での近赤外利用パフォーマンスを十分に示すものでした!

cokatooさんの近赤外利用に関する提案はこちで詳しく拝見することができます。


utoさんは、金メッキミラーによる近赤外への独自アプローチをおこなっておられます。
uto gold
この金色の美しいミラーは、去年の暮れにエドモンドオプティクスで「今日中なら半額」キャンペーンでゲットされたそうです。そして、この金メッキミラー では、何とノーフィルターにて光害をカットしつつ、最強の効率で近赤外域を利用するという驚異のアドバンテージが得られています!

さらに、最新のデジタル機器と究極のアナログ「手動」を融合しヒンジトラッカーによる手動追尾でライブスタックを成功させるという快挙も!

独自の天文ライフスタイルを提示し続けるutoさんのブログからは目が離せない展開となっております。

ちなみに、「赤外探偵団」では金メッキミラー使用の方を「ゴールド会員」として認定することにいたしました(笑)。


ケニ屋さんは、最近ASI174MMを入手されたそうですが、 発注にあたっては、何だか知らない間に指が動いていたそうです(笑)。で、このモノクロCMOSで中継をしてくださったのですが・・・
keniya kumori
中継が始まったとたん雲が広がるという「あるある」でこんな感じになり、残念でした。その後、いったん仮眠を取られて午前2時からご自分のシステムで70個もの銀河をゲットされたようです。そのうちの一枚M88(15秒 7スタック)をTwitterにあげておられたので、転載します。
けにやM88で、15s×7
さて、ケニ屋さんのような高感度モノクロCMOSを導入すると最強なのですが、やはりそれなりのコストがかかりますので、とりあえずお試し版として、お値打ち価格のモノクロCMOSは何か? にこの後話題が移りました。

結論としては、やはりIMX290のモノクロセンサーを利用したCMOSカメラになるだろうかね、というところ。
具体的には、ZWOのASI290MM(USB2.0版aliで約3.3万)、QHY CCDのQHY5III290M(ali で約3.5万)
さらに最近サイトロンジャパンさんが日本代理店になった、player-one-astronomyMARS-C($329)あたりになろうかと思いますが、どれも価格的には大差がないですね。後発メーカーであるplayer-oneの6角形のCMOSカメラには価格的なブレークスルーを期待していたのですが、この価格では実績のあるZWO等の牙城を崩すのは難しいような気もします。
ここはやはりSVBONY SV305のモノクロ版に期待が集まります(19.800円を希望!)

SV305といえば、これのフィルターレス改造をおこなった智志さんが、近赤外利用をおこなっています。M65、66(会議中には間に合わなかったので、あとでTwitterにアップされていたものを転載しました)
satoshi
(Kenko New Sky Explorer SE 150N サイトロンジャパン IR640 Pro AstroStreet GSO 0.5x フォーカルレデューサー SVBONY SV305(フィルターレス改造) Sky-Watcher AZ-GTi (赤道儀モード) DeepSkyStacker Lightroom (スマホ版) ほか Gain=30.0で30s×95枚スタック 総露出時間 47.5分 自宅2階ベランダにて撮影)
星像が暴れまくっていたそうで星が点におさまらなかったものの、ローコストの(しかもモノクロではなくカラー)CMOSカメラでも、工夫次第で近赤外利用が十分なパフォーマンスを発揮する可能性を提起してくれています!

さて、自称「初心者」(笑)のタカsiさんも最近、光害地での近赤外利用による銀河の撮影を始められ「赤外には期待しかない」とおっしゃっていました。
c11にスターリゾナー0.72×レデューサー、 アストロノミック642フィルターによるM81、まずは一枚画像。
takasi 1mai
この時点で解像度が半端ないのですが、これをスタックしたもの(何枚だったかは聞き逃しました)は・・・・
takasi stakku
このような超ド級の仕上がり! 現在アマチュアが実現できる最強レベルの解像度を実現していると拝見しました。しかも、これが18.37SQMの光害地からの撮影ですからなおさらです。
(ちなみに、副鏡が補正板で保持されているC11では本来は出ないはずのスパイク光条がありますが、これは「あえて」取り付けられた疑似スパイダーによるもの。L画像として、ミューロン等の光条が出る鏡筒で撮影された画像と合わせる上での必要性からこうされているそうです)

この他にも近赤外による素晴らしい銀河の画像を多数見せてくださっています。
takasi
さて、RASA8で広視界撮影をされていたRYOさんもASI462[MCで近赤外による銀河撮影に参入!
RYO 満月
しかも、これは満月の条件によるものです。我々は近赤外利用によってついに月齢の壁も克服した、ということが言えますね!

しかしそれは、満月時に休めなくなり「一月を通じての稼働」が強いられるようになった両刃の剣でもあります(笑)。

このように従来では考えられなかった状況へと大きく変わってきたのは、何といってもCMOSカメラが小さくて軽く、高感度・高画質になったということに尽きます。このカメラの性能向上によって運用する鏡筒・架台の最適解も変遷していき、今後目が離せない展開になっていくだろう、という結論で会議は終了いたしました!

さて、月例開催をおこなってきましたWeb会議「オープン双天会」ですが、今回を持って最終回、今後は近赤外利用をトピックの中心とする「赤外探偵団」的な集まりとして随時開催いたします。

例えば、超高感度で赤外感度が高い「IMX482センサー」搭載カメラが発売された、等のブレークスルー(これが出れば一挙に機材の小型化が実現するくらいの大事件)が起これば、「緊急討論会」的に対応策を協議するべく招集する可能性がありますので、その際はお集まりいただけるとうれしいです!